My Life Style
種を蒔く家
<Sumika 9号>
小さな集落の中に佇む、平屋の白い家。心の根っこを耕し、日々を大切に育てる都城市山田町・土方さん一家のお話。
自由な思考と行動で 世界が繋がっていく
扉を開けると、光と風をいっぱいに取り込んだL字型のLDK空間が広がっています。子どもたちの元気のいい声とともに迎えてくれたのは、土方さん一家。長女の花月さんは県外へ進学し、現在はご夫婦+ふたりの娘さんの4人暮らし。シンプルでありながら、機能性と快適性を併せ持った棲家。築6年を迎えてすっかり町になじみ、家族と一緒ににぎやかな時間を共有しています。
ご主人の晴彦さんの仕事は、家畜(牛)の人工授精師。御池や西岳地区の牧場を中心に多くの牛の健康状態を管理。3年前に脱サラして資格を取得して以来、朝も昼も夜も1日も休むことなく牛舎へ足を運び、牛と向き合っています。
奥様の文子さんは愛知県のご出身。かつてはテレビ局のメイクさんとして働いていましたが、田舎暮らしとサーフィンヘの想いが高じて(いい波と人の縁を繋いでいくうちに)宮崎へ辿り着きました。現在は介護士として福祉にたずさわりながら、英語や農業、そして自らの体験を通した様々なコンテンツを発信・配信。各種SNSでの活動を覗けば、「自由な生き方・働き方」の種(ヒント)がたくさんちりばめられています。
家と海と山をめぐる 足るを知る暮らし
ご主人の夢は自給自足。牛まれ育った地元の山野を愛し、時間をつくつては釣りや山菜摘みなどに出かける哨彦さん(かつては“牛飼い”を夢見たことも)。もっかの目標はお米づくり。そんな土方さん一家が月に2~3回通っているのは、友人が運営する農園『感謝ファーム』。
ファームを営むのは、ロサンゼルスから移り住んだアームシャーご夫妻。空き家に手を入れ、荒れた耕作地を開墾し、大地の恵みを糧にしたサスティナブル(持続可能)な暮らしを提案&実践するホームステッダー(自作農家・開拓者)です。
土を耕し、種を蒔き、水をかけ、育て、ありがたく収穫する。土の中の微生物から人間までがひとつに繋がって成り立つ暮らし…。
海外からのゲストも多く訪れる感謝ファームには、宮崎弁や鹿児島弁よりも多くの英語が飛び交います。くしくも文子さんは、自分と世界を繋ぐ大切なツールとしてコツコツと英語を学び続けてきました。日々を大切に、縁を結び、種を蒔くように暮らす土方さん一家。英会話もまた、自分らしい暮らしを実現するための、ひと粒の“種”だったのでしょう。