My Life Style
花と緑のある暮らし
アナーセンの庭
<Sumika 10号>
のどかな畦道の先で揺れる、色とりどりの花々。赤や黄色や白の花は冬の陽射しを浴びて瑞々しく、ハツラツと咲いている。花の香りに誘われ、アナーセンの庭を訪ねた。
2005 年に始まった
アナーセンの物語
ぽかぽかとした陽射しが注ぐ冬は、南国・宮崎にとって花のシーズン。こんもりとした木立ちから木漏れ日が注ぐアナーセンの庭には、県内や全国各地から届いたみずみずしい花々が咲き誇っています。
お店の屋号は、デンマークの童話作家として知られるハンス・クリスチャン・アンデルセンに由来し、デンマーク語の発音を元に『アナーセン』と名付けました。2005年、長く務めた会社を辞めて、姪っ子さんが暮らすデンマークを訪れたオーナーの川口のり子さん。くしくも当時のデンマークはアンデルセンの生誕200年を前にお祝いムード一色でした。滞在中には閉店間近の花屋さんとの出会いもあり、宮崎での花屋の開業に必要な物も多く仕入れることができたといいます。運命的な縁に導かれるように、お店の名前は「アナーセン』に決まりました。
50歳の頃に病気を患い、入院生活を送っていた川口さん。そんな中、ベッドの中でふつふつと湧いてきたのは「花の仕事がしたい」という思いでした。宮崎県の生まれ育ちで、高校卒業後、就職と結婚を経て証券会社に勤めること16年。畑仕事や花仕事とは無縁の生活が続いていましたが、「今になって思えば、嫁いだ先の庭が広くて、土や花や植物に触れる環境もいいと思った」と、まさかのちに自分が花屋を開くとは考えもしなかった30代の頃を振り返ります。
病院のベッドで募らせた想いは、すぐに結実。川口さんは退院するとすぐに仕事を辞め、デンマーク滞在を経て、退職から半年後には宮崎で花屋をオープンさせました。「長い間、機が熟すのを待っていた気がする」と話す川口さん。病床で過ごした時間は、新しい実が熟す(はたまた蒔いた種が発芽する)一つのきっかけだったのかもしれません。
「雪の女王」「マッチ売りの少女」「人魚姫」など多くの名作を生み出したアンデルセンの生誕200年の節目に、遠くはなれた宮崎の地に掲げられた
「Andersen 」の手書きの看板。「アナーセン』が紡ぎだす新しい物語は、2005年の3 月にスタートしました。
薪ストープと士間と
縁側と庭のある家
北欧風のお店とは一転して、川口さんのお住まいはレトロな和の仔まいで統一。かつてご両親が暮らした築40年の平屋住宅を、10年前にリノベーション&リガーデン。アプローチの植栽や庭は、信頼する庭師さんに仕立ててもらいました。夏の陽射しをさえぎり、冬には陽光をいっぱいに取り込む多様な木々は、季節によって色を変え、実をつけ、葉を落とし、芽吹き、様々な表情を見せてくれます。
庭に面した広間は、もともと二間だった和室をひとつに繋げ、縁側から続く広いウッドデッキが特徴です。窓を開ければ圧倒的な解放感に剋まれると共に、深い軒があることで厳しい夏の陽射しや雨の日も安心。
一方窓を閉めても、二間続きのパノラマの窓越に風に揺れる木々や花々を愛でることができます。当初は室内のリノベーションにももう少し手を入れる予定でしたが「家の中にいると目線がすべて外(庭)に行くから、中はこのままでいい」と思い留まったそうです。それでも広い玄関土間や赤い薪ストーブなど「らしさ」が存分に詰め込まれた棲家となりました。
花を通じてさまざまな縁や出会いがあり、オープンから2 度目の移転で田んぽの中にしつかりと根を下ろしたアナーセン。生産農家を訪ねて仕入れた育種ビオラやパンジー、ラナンキュラスをはじめ、苗物、鉢物、切り花、雑貨などが揃います(ワークショップや季節のイベントも多数開催)。
16年目の春を迎えたアナーセンは、今日もそれぞれの「花と緑のある葬らし」にそっと寄り添っています。
Flower Boutique Andersen
宮崎市跡江1380-9
tel&fax 0985-48-2668
営業/10:00-17:00 休/月曜
アナーセンの庭 Sumika 10号号